ピンホール

欠陥の状態

ピンホールとは、多数の細かい穴または端部にできた気泡を指します。散発的に大きな範囲で発生し、鋳造物のどの部位にも発生します。多くの場合、機械加工を行ってから発見されますが、どんな場合でも多くは肉眼で確認できます。主としてピンホールは、片状黒鉛、球状黒鉛、バーミキュラ黒鉛を含む鋳鉄、可鍛鋳鉄、鋳鋼鋳物の、外側または表面のほんの少し内側にあるものが発見されます。

発生の形

ピンホールの発生の形は、球状のもの、ひび割れ状のものまたは黒鉛の薄膜をともなう気泡から、サイズの大きな、不規則にならんだスラグ
または酸化現象をともなうキャビティに到るまでさまざまです。ピンホールには、見た目のほとんど変わらない水素型ピンホールおよび水素/窒素型ピンホール、ならびにCOスラグ反応型ピンホールなどがあります。この欠陥の発生の考えられる原因として、一方では鉄の特殊な性質があり、他方では鋳型材料系の特殊な性質があります。具体的な事例を見ると、ピンホールは単一の原因だけで発生しておらず、複数の原因が重なり、総合的作用によって形成されていることがしばしばあります。ピンホールが形成されることによる影響は、ほうろう引き、亜鉛メッキ、パウダーコーティングなどを行う際に現れます。静的な負荷耐性は、これらの欠陥によっては、特にダクタイル鋳鉄の場合や、許容溶解能力が低い場合などは、まったく影響を受けません。密度の高さが要求される、加工された機能面にこれらの欠陥がある場合は、不良品となります。欠陥の状態が深刻な場合は、疲労強度に影響が出ます。振動負荷にさらされる安全関連のパーツにピンホールが形成されることは許されません。

原因

ピンホールが形成される基本的な原因は、溶湯の性質および鋳型材料系の性質のどちらかまたは両方の可能性があります。

水素型ピンホールおよび水素/窒素型ピンホールは3段階で形成

  • 水蒸気が鉄の溶湯に含有されている成分と反応します。すると、酸化鉄と水素原子が発生し、これが溶湯内に拡散します。同じようにして、水素と窒素の結合が断たれ、これらが溶湯内に拡散します。
  • 酸化金属と溶湯内の炭素とが反応して、超微細な気泡ガスが形成されます。
  • 水素または窒素が超微細な気泡ガスに混合し気泡が大きくなります。

冶金的な原因によるピンホール形成

  • 溶湯中の水素含有率の増加 - 使用されている材料全般の水分、特に多くの水分を含有する粒子の細かい保護されていない鉄合金、錆びやすい原材料、油分、炭化水素を放出するエマルジョンなどの水素担体、および最終的には大気湿度の増加などによって引き起こされる。
  • 溶湯中の窒素含有率の増加 - 鋼屑(130 ppm N以下、最大 200 ppm N)、レール鋼(170 ppm N以下)、銑鉄(10~60 ppm N)、浸炭剤(0.11 x 104 ppm ~ 1.675 x 104 ppm N)などの窒素担体などによって引き起こされる。

誘導攪拌などの外部からの刺激によって気泡が形成され、脱ガスが起こる可能性があり、そのため溶湯内での窒素含有率は、40~140 ppmの範囲で変動します。ピンホール形成の限度値は、80~100 ppmの間とされています。ただし、CO排出のともなう場合はもっと低い値が限度値となっています。

鋳鋼に対し、鋳鉄はガス受容の傾向が少なくなります。これは、炭素および珪素が溶解度を下げ、それによって水素と窒素を取り込む能力が下がるからです。その結果、飽和水準の低い鋳鉄溶湯は、ずっと敏感になります。これは、当然飽和水準が低いはずの可鍛鋳鉄の場合の欠陥発生が多くなります。

Al、P、Si、Cなどが、水素および窒素の溶解度を下げる一方で、Cr、Mo、Mn、V、Tiなどは、水素および窒素の溶解度を高めます。検査を行った結果、Al含有率 380 ppmの鋳物の場合、多数のピンホールが形成されたのに対し、Al含有率 70 ppmの場合(ガス含有率同じ)は到って良好な結果を示しています。Alを溶湯に注入する場合、Alの含有率が高いと、鋳型から発生する水蒸気とも混合して、酸化アルミニウムと水素が発生します。この水素が気泡を形成します。ここが、純粋に冶金的原因による気泡ガスと主型/中子/鋳物の境界面反応によるものとの違いと言えるでしょう。

鋳型材料を原因とするピンホール形成

  • 型砂の水分が高いときに、窒素含有量が多すぎる場合。
  • 鋳型キャビティ内のガスの状態が不適切な場合 – ラストラスカーボンの種類および投入量にその原因があると思われる場合。
  • 中子の砂の窒素含有量が高すぎる場合、または中子材料粘結剤の窒素/水素結合物の含有量が高すぎる場合。
  • 特に、中子粘結剤が熱分解される際に、外殻部が十分に固まる前に多量のガスが放出された場合。

発生のメカニズムの説明:


気圧が減って行くにつれて、アンモニアが次の式に従って分解します:

2NH3 = N2 + 3H2

温度約600℃および1気圧の状態で、アンモニアはほぼ完全に分解されます。このときアンモニア分子2個から、窒素分子1個と水素分子3個が発生し、ガスのボリュームは2倍になります。この水素ガスは、時に、排出されるCOを、以下の式に従って反応することがあります:

CO + H2 = H2 O + C

  • ベントナイトによる鋳型材料の結合が不十分である場合、およびその結果として、ベントナイトの成分(3層モントモリロナイト)と結合していない、水素の発生を助長することになる水分が存在する場合

ピンホールの形成には、鉄の配合や鋳型材料の性質の他にも影響要因があります。スラグが完全に除去されないと、スラグが含有され、気泡ガス発生の原因となる場合があります。鋳鉄内部の球状黒鉛には、多数の酸化物が含まれており、スラグが取り除かれていたとしても、この酸化物がピンホールの形成にひと役買う可能性があります。マグネシウムを取り扱う際に発生するスラグも、純粋に機械的に表面の欠陥を引き起こすのか、あるいはガスの発生を助長するのかははっきりとはしていませんが、同様に影響を与えます。注湯技術および鋳造方案もまた、ピンホールの形成に影響します。鋳造方案に湯流れの乱れがないようにすること、および湯流れ経路が短縮されることで、ピンホール形成への傾向が抑えられます。溶湯の飛沫もまたピンホールの原因となり得ます。これらは酸化して、それから溶湯の流れに呑み込まれます。これによって、COが発生し気泡ガスが形成される反応が引き起こされることがあります。