引け巣

引け巣は、鋳型プロセスや注湯プロセスの内容に拠らず、あらゆる技術的な鋳造材料で発生します。とは言え、ダイカスト鋳造の技術には、引け巣の形成を防止または最少化する方法が開発されています。すなわち、鋳型への注湯が終わったらすぐに高いエンドプレッシャーをかけるというやり方です。しかしガスポロシティがこれによって防止できるというわけではありません。

引け巣の現れ方によって、閉じた引け巣(内引け巣)、開いた引け巣(外引け巣)、および外引けなどと区別します。引け巣のできる位置は、論理的には外引け巣の場合は通常、最後に凝固する鋳物の最上部、鋳物の厚肉の部分や押湯や湯口近辺に発生します。内引け巣の場合は、特に厚肉の部位および厚肉の変化の激しい部分などに現れ、外引けは、主に断面移行部および比較的厚肉の鋳物の外側に現れます。引け巣は、しばしばマイクロポロシティを伴って発生します。

引け巣の発生の形特に引け巣が起こりやすいのは、純金属や共晶合金や包晶合金などの、なめらかな壁面で凝固する、凝固時間の短い材料です。

外引け巣

外引け巣は、深くシンメトリックなキャビティで、通常は外側に向かって漏斗型に形成され、その内側に内引け巣が続いている場合もあります。キャビティの壁面は大抵は粗く、樹枝状をなします。外引け巣は、肉眼ではっきりと確認できます。


内引け巣

内引け巣は、外側とのつながりが一切ありません。そのため、鋳物の内側において粗い壁面を持つ不規則な形状をなし、しばしば樹枝状の結晶を見せ、非破壊検査または後処理の際に肉眼で確認できます。

外引けは、鋳物表面にできる窪みのことで、厚肉の部分に発生します。外引けの表面はそれ以外の部分の表面と違いのない質を有しています。外引けも、肉眼ではっきり確認できます。鋳造技術(指向性凝固および押湯の改善)を以てしても引け巣の形成を鋳造品の外部に移すことができない場合は、不良品となります。

凝固および冷却時の鋳造金属の収縮

通常の鋳造金属の比体積は、固体よりも液体の方が大きくなります。このような性質の金属は、凝固および冷却の過程において収縮します。このときに体積が減少することによって、引け巣、外引け、マイクロポロシティなどの欠陥が発生します。引け巣は、凝固の過程における物理的な体積の減少と、押湯による収縮分の体積の相殺との相互作用の結果形成されます。

比体積との関連における技術的な体積減少で重要な役割を演じるのは、まず鋳造材料の機能です。総体積の減少量に対して、その鋳物における分布および、現れる体積欠陥の種類は、凝固の過程によって異なります。このとき、合金のガス含有量、砂型鋳造の際の鋳型の内壁の動き、および鋳鉄合金の凝固の際の黒鉛膨張などが、引け巣に影響する要因となります。

鋳鉄合金の引け巣の形成

 

以下の表に記載されている個々の金属組織の要素の比体積の違いは、普通鋳鉄の体積の減少を特徴付けるものです。

鋳鉄の個々の金属構成成分の比体積

金属比体積単位m3/g
フェライト 0.1271
炭化鉄 0.1303
オーステナイト(C飽和) 0.1360
グラファイト 0.4475

共晶凝固の場合、排出されるグラファイトの膨張が、オーステナイトの凝固収縮を妨げる方向で作用します。グラファイトの含有率が一定の値に達すると、凝固時に現れる収縮が、オーステナイトの形成の際に相殺される可能性があります。これはすなわち、化学的な配合、冷却時の条件、接種剤の調整によって、「自己相殺」が可能であると言うことを意味します。共晶凝固の際に排出されるグラファイトの量が大きい場合、グラファイトの形成によって増加した体積が、凝固による収縮体積よりも大きくなり、全体的な体積が増加することもあります。

片状黒鉛を含む鋳鉄は、クロム飽和水準が上がり共晶点に達するまで、引け巣形成の傾向が減少することを示します。体積の減少は最も小さくなります。これは外引け巣の大きさや、微細な引け巣の割合などにも該当します。共晶点を超えた範囲では、引け巣形成の傾向は再び増加します(図7)。
 
飽和水準が同じ場合、炭素の含有量が上がることで、予想される引け巣体積は減少します。Pはマイクロポロシティ形成の傾向を強めます。特に、P含有率が0.3%超の場合、P濃度の高い残留溶湯ができることの結果です。
接種が行われていない溶湯は普通鋳鉄として凝固するという前提条件のもと、片状黒鉛を含む鋳鉄への接種は、引け巣やポロシティおよび外引けなどの形成を強める方向で作用します。共晶でグラファイトが力強く排出されることによる強い膨張、および凝固の種類が「粥状」凝固へと変わることによって、鋳物が強く「押しのけ」られることになり、それによって鋳物の輪郭が鋳型材料の性質によってキャビティ拡張の方向に変化します。

球状黒鉛を含む鋳鉄は、片状黒鉛を含む鋳鉄よりも、より強く引け巣形成への傾向を示しています。普通鋳鉄溶湯にマグネシウムを添加すると、引け巣体積が0.5から5cm3にまで跳ね上がります。

片状黒鉛を含む鋳鉄の凝固が殻を生成するように進行するのと対照的に、球状黒鉛を含む鋳鉄の凝固は、粥状に進行します。主に押湯および鋳造方案で液状収縮および二次収縮が行われる一方で、凝固過程中に膨張が起こります。

凝固の時間的事象のさまざまな研究から、黒鉛は外殻部で析出する効果により、外殻部と鋳型材料がこの内部からの圧力をこらえきれない場合は、外側に膨らみ膨張する可能性があります。鋳物の内側で収縮する溶湯に湯の補給がなされないと、これだけの理由によって引け巣が形成されてしまいます。凝固の終わりの方の段階に入ると、鋳物の多くの部分で黒鉛が多量に析出されます。
外殻部はすでに収縮しているしている可能性が高いので、自己相殺の条件は整っています。外殻部がまだ共晶凝固の段階にある場合は、外側への膨張が強くなることを計算に入れる必要があります。

この膨張段階をうまく利用することができれば、主型が強固のとき、二次収縮での補正が起こり、それによって引け巣のない健全な鋳造品ができあがります。

配合が共晶条件を著しく上回る/下回る場合、接種が不適切である場合、高温で注湯時間が長すぎる場合ならびにマグネシウムの含有率が高すぎる場合、球状黒鉛を含む鋳鉄の引け巣形成傾向が強まります。鋳鉄の合金の種類は、通常、高い引け巣形成傾向を示します。これは、配合中における銑鉄の割合が多い場合と同様です。この最後に言及した影響要因は、溶解工程との関係を見ていかなければなりません。

アルミニウム合金の引け巣の形成

全体的な体積の減少は、この場合も、まず合金の配合および注湯温度(冷却条件)によって異なります。この合金の鋳物製造過程は、凝固過程から大きな影響を受けます。
形成された外殻部の強固さと押湯能力、すなわち、凝固しつつある鋳物内部の湯流れの条件が重要な役割を担っています。

一般では、合金の成分の含有率によって、以下に挙げるような引け巣形成の過程が発生します:外引け巣の体積は、純金属から、凝固時間の間隔の長い合金に到るまで、小さくなっていきますが、共晶に達してからは再び大きくなっていきます。外引けの体積およびマイクロポロシティは、これとは逆になります。この現象は、凝固の工程の変化に対応しています。Cu、Mg、Siなどの添加物が増えると、全体の引け巣体積はアルミニウムそのものに対して少なくなって行きます。Siの影響が最も大きくなっています。Al-Cu合金およびAl-Si合金の凝固収縮は、CuおよびSiの含有率が上がるにつれて少なくなります。例えば、鉄などの不純物があると、引け巣の形成は増えて行きます。

外引け巣と外引けは、アルミニウム合金の場合、さらに砂型の圧縮が適切でない場合や、金型の温度が高すぎる場合(ダイカストの場合)にも生じます。材料の配合によって、全体的な体積の減少が2~7%になるので、常に凝固の状態を修正し十分な湯流れを確保するような対策を講じておく必要があります。

NaやSnなどを加えて改良処理することによって、砂型鋳造においてもダイカスト鋳造においても、外引け巣が著しく増加し、外引けおよび内引け巣(マイクロポロシティ)は減少します。実際の鋳造品においては、特定の断面範囲において、外部凝固から内部凝固へと凝固の過程が切り替わります。この場合、効果がオーバーラップし、外引け巣とポロシティの体積は平均値レベルに収まります。

このような改良処理の場合、Al/Siの共晶を、薄板状または粒状の状態で、Pの含有量との関連で調整できるかどうかに注意してください。この調整は、ダイカスト鋳造の場合、どちらも同程度の全体的体積減少を示し、砂型鋳造の場合は、粒状の材料のほうが薄板状のものよりも調整しにくいという値を示します。

この両者の場合、全体的体積の減少の分布は、Naを0.02%添加した時点ですでに変化します。粒状および薄板状の材料の場合、外引け巣の体積は増加し、外引けの体積は減少します。さらにNaを添加すると、外引け巣の体積は減少します。ダイカスト鋳造の場合、共晶が薄板状の場合Naの添加はほとんど影響を与えません。粒状の共晶を示す合金の場合、外引け巣ははっきりと減少傾向にあることがわかります。Naの添加量を増やして行くと、外引け巣の体積は増加し、外引けは減少します。さらに、砂型鋳造の場合、Naの添加量を増やしていくと、外引け巣の樹枝状を引き起こします。

出典:„Guss- und Gefügefehler“ von Stephan Hasse(「鋳造欠陥と構造欠陥」シュテファン・ハッセ著)